【法人vs個人事業主】退職金,どっちがトク?(2/2)-法人の退職金は損金に
退職金は、法人(会社)と個人事業者の、どちら(の形態)がオトクか。
今回は「法人編」です。
結論は「法人」。
それでは、中身を見てまいりましょう。
山梨県中央市の税理士、田中です。
退職金はどっちがトクなのか?
経営者自身への退職金は、法人であれば、損金(≒経費)になります。
タナカ
会社(法人)の退職金
役員に対する退職金。
法人であれば損金となります
ただし、「相当に高額な部分の金額を除いて」です。
なにやら小難しい表現ですが、「世の社長の退職金と比べて、多すぎたらダメよ」というニュアンスです。
小難しい制限はあるものの、退職金を全く支払うことができない(全く経費にならない)個人事業主と比べれば。
損金(≒経費)になるというのは、大きな利点と言えるでしょう
さらに、退職所得は所得税でも優遇されています。
役員退職金の適正額とは
退職金は、基本的には、会社の退職金規定に基づきます。
しかし、役員退職金は、退職金規定のほかに考えないといけないポイントがあります。
そのポイントとは。
次のようなモノです。
- 役員が業務に従事した期間
- 退職の事情
- 同業他社の水準
役員退職金の算式(損金になる上限のめやす)
役員の最終報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率
功績倍率は、同規模の同業他社と比較して平均的な倍率です。
一般的には、「2倍」から「3倍」程度が妥当ということになっています。
4倍近くでも認められる事はあって、これだと言い切ることは難しい。。
あいまい大好きなのが、日本の税法なのです。
退職金にかかる税金
退職金は個人がもらうものです。
ですから、退職金にかかる税金は「所得税」。
退職後の生活をささえるものであるという考え方から、税金は優遇(安く設定)されています。
退職所得の計算
算式は、↓こうです。
(退職金−退職所得控除額)× 1/2
※勤続年数が5年以下の役員は、「×1/2」できません
退職所得控除額とは
- 勤続年数が20年以下
4万円 × 勤続年数(最低80万円) - 勤続年数が20年長
800万円 + 70万円 ×(勤続年数 − 20年)
例
役員として21年間働いた会社から、退職金1500万円を受け取った場合で考えてみましょう。
退職所得控除額
800万円 + 70万円 ×(21年 − 20年)= 870万円
退職所得
(1500万円 − 870万円)× 1/2 = 315万円
所得税
315万円 × 10% – 97,500円 = 217,500円
住民税
3,150,000円× 10% = 315,000円
所得税・住民税を合わせて、532,500円です。
1500万円の退職金に対して、53万円ちょっとの税金。
パーセンテージでは、3.55%。
ホント、優遇されていますね。
退職所得は分離課税
「退職所得」は、他の所得と分けて税額を計算します。
他と分けることから、「退職所得は分離課税」なんて言ったりします。
退職金を受け取った人が、退職後、事業をはじめた例で考えてみますと。
事業のもうけ(事業所得)は、他の所得と合算して、税金の計算を行う(税率をかける)のが通常です。
でも、退職所得は合算しません。
結果どうなるかと申しますと、
高い税率が適用されにくくなる
のです。
イメージ図であらわしますと、
↓通常は(退職所得以外の所得は)、ブルーの所得・グリーンの所得 を合算して、税率を乗じます。
高く積み上がれば積み上がるほど、税率は上がります。
(低い部分には低い税率が、高い部分には高い税率がかかる。全体として、税率はあがる。)
しかし、退職所得は、他の所得と合算しません。
グリーンの部分が退職所得、
ブルーの部分が事業所得としましょう。
積み上げず、グリーン(退職所得)はグリーン(退職所得)で、
ブルー(事業所得)はブルー(事業所得)で、それぞれ分けて税率をかけます。
積み上がらない分、所得の箱は高くなりません。
つまり、高い税率が適用されなくなります。
結論! どっちが有利か?→「法人」です
原則的に、全額が損金経理することができる法人が有利と言えるでしょう。
「退職金」が所得税法で優遇されている(税率が低く設定されている)のは、すでに申し上げたとおりです。
さらに、次の法人役員は「小規模企業共済」に加入することができます。
- 常時使用する従業員の数が20人以下
(商業、サービス業の場合は5人以下)
個人事業主にとって、退職金代わりになるというアレです。
【前回】【法人vs個人事業主】退職金,どっちがトク?(1/2)-小規模企業共済-
掛け金が「所得控除」されますから、退職前の役員報酬について、節税を図れます。
補足
「法人が有利」
という結論は、退職金に限った話しです。
個人事業主でやっている仕事を法人化するかどうかは、いろいろな要素を勘案して決めること。
法人化したとして、そもそも退職金を支払えるだけのお金があるとも限りません。
「いろいろな要素」は、経営者の数だけあります。(ほぼ)
誤解のないように、お願いいたします。